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東京高等裁判所 昭和40年(ネ)2086号 判決 1969年7月23日

控訴人 神宮勝利

被控訴人 出淵キミ 外三名

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

控訴代理人は、原判決中敗訴部分を取消す、被控訴人らの右請求を棄却する、訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とするとの判決を求め、被控訴代理人は、控訴棄却の判決を求めた。

当事者双方の事実上並びに法律上の主張、証拠の提出援用認否は、後記(一)ないし(四)のように附加訂正するほか原判決事実欄記載のとおりであるからこれを引用する。

(一)  控訴代理人は、「本件自動車の運行は控訴人のためになされたものではない。訴外神宮利夫は父である控訴人とは不仲であつて別に世帯を持ち、その仕事も控訴人とは独立無関係のものに従事しているのであつて控訴人の監督のもとにあるわけではない。しかも、控訴人は本件自動車の鍵を訴外神宮実に保管させていたもので、自動車運転免許を有しない利夫のようなものに本件自動車を貸す筈もない。控訴人としては本件自動車を家の裏に木柵をして囲んだ中に保管していたものでその保管方法に過失はなく、利夫は本件自動車を勝手に不法使用したもので、窃盗者ないし強盗がこれを不法使用したのと同じである。それ故控訴人は利夫の本件自動車の運行について自動車損害賠償保障法により責任を負うべき自動車の保有者には当らない。」と述べた。

(二)  被控訴代理人は、「控訴人が本件自動車を木柵を設けた囲いの中に保管していたことは否認する。本件自動車は単に控訴人居住家屋の敷地内に置かれていただけであつて、車庫を設けてこれに格納し、施錠等の方法を講じてあつたわけでもなく、何人でも使おうと思えば何時でもこれを使用できる状況に置かれていたものである。しかも、神宮利夫が右自動車の鍵を用いず、電気回路を接続する方法によつてエンヂンを始動し、これを常時運転していたことを控訴人は知りながら黙認していたものであるから、控訴人は子である利夫が本件自動車を使用することを許諾していたものであり、自動車損害賠償保障法による自動車保有者としての責任を免れるわけにはいかない。なお、原判決四枚目表四行目の主張中「その他の家族」とは「被控訴人るい」、「同のぶ子」「同一」を指すもので、敏運の生計費算出については、被控訴人ら全員の生計費を計算してこれを算出したものである。」と述べた。

(三)  原判決三枚目表六行目に「被告勝利の実父」とあるのは「被告利夫の実父」の誤記であり、同丁裏五行目の「金一六、六五〇円」とあるのは「金一二、六五〇円」の誤記であり、同五枚目表終りから二行目の「前項(五)」とあるのは「前項(三)」の誤記、同末行の「前項(四)及び(五)」とあるのは「前項(二)及び(三)」の誤記であることがいずれも明白であるから訂正する。

(四)  証拠<省略>

理由

当裁判所もまた次に付加訂正するほか原審と同じ理由により被控訴人らの控訴人に対する本訴請求は原審の認容する限度で理由があり、その余の請求は理由がないものと認める。

原判決理由一枚目表終りから三行目の「原告」を「被告」と訂正し、同裏終りから四行目以下の「証人神宮実の証言及び被告利夫の本人尋問の結果を総合すると」を「原審及び当審証人神宮実の各証言、原審における共同被告神宮利夫、当審における控訴人各本人尋問の結果(一部)によると」と訂正し、同二枚目表二行目「被告利夫は」の次に「長男であるが」、同三行目「別に」の次に「隣家で」と各挿入し、終りから三行目「。右認定」以下同丁裏八行目迄を「、利夫はこのように弟の実から本件自動車の鍵をかりてこれを運転したこともあつたが、乱暴な行いもあり、本件自動車運転の免許をもつてもいなかつたので、実は父である控訴人から注意されて後は利夫に鍵を貸して本件自動車を使わせたことはなかつたこと、しかし利夫はその後も控訴人や実に無断で何回かピン等を使用して電気回路を接続する方法によりエンヂンを始動させ本件自動車を使用運行した形跡があつたこと、利夫がこのようにして本件自動車を使用している事実は控訴人の気づいていたところであつて、それ故控訴人から実に対して、利夫に無断運行させないよう注意するように指示を与えていたものであること、しかし実はこれがため利夫の鍵貸与の要求を固く拒絶する以上の手段にいでたことはなく、控訴人も、利夫が鍵なしで本件自動車のエンヂンを始動、運行させ得ることに気付いていながら格別の方法を講ずることをせず、ただその所有建物の木柵の内側の建物の横ないし後方に本件自動車を駐車させておいたのに過ぎなかつたので、本件事故当夜も利夫は酔余実に前記鍵の貸与を迫つて拒否されるや、ピン等を用いて電気回路を接続させる方法で本件自動車のエンヂンを始動させこれを運行して外出した結果本件事故を起するに至つたものである事実が認められる。ところで、控訴人が右のように隣家に居住する長男である利夫において本件自動車を前記のように鍵なしでしばしば運行したことのあることを知り乍ら、施錠のできる車庫等適当な保管場所を設けないで、単に自分の屋敷内に駐車させ、利夫がたやすくこれを持出せるような保管の仕方をしていたに過ぎなかつたのは、前認定のような事情のもとでは、本件自動車の運行をする可能性のある利夫に対する控訴人の監督が不十分であつたというべきであつて、外部から見れば暗黙の許容と見られてもしかたがなく、単なる自動車窃盗などがこれを擅に持出し運行したような場合と同様に考えるわけにはいかない。自己の業務のために本件自動車を運行の用に供していた控訴人は、利夫がしばしば行うことが判明していた不法使用についても十分な注意を払うべきであつて、実に対して前記のような注意を与えていたというだけでは本件事実関係のもとで本件自動車の運行に関し注意を怠らなかつたものということはできない(当審における控訴本人尋問の結果のうち以上認定に反する部分はたやすく採用することができない。)。このように見て来ると、本件事故当夜における本件自動車の運行がたとえ主観的には控訴人の意図するところではなかつたとしても、これを自動車損害賠償法にいう「自己のために自動車運行の用に供する」場合にあたらないということはできないし、その運行に関し注意を怠らなかつたということもできないから、控訴人は同法第三条の損害賠償責任を免れることができない。」と訂正し、同四枚目表終りから二行目「すなわち」以下同丁裏二行目「金四、四九二、四八八円八八銭」までを「を計算するのにホフマン式計算方法を用い中間利息を控除して一年ごとに算出した金額を合算すれば(最高裁判所昭和三四年(オ)第二一三号同三七年一二月一四日第二小法廷判決、民集一六巻二三六八頁参照)金五八三万〇五〇三円(円未満切捨)」と訂正、同四枚目裏四行目「原告ら」以下五行目「全員」までを、「被控訴人キミは敏運の妻、被控訴人のぶ子および被控訴人一はいずれも亡敏運の嫡出子」と訂正、七行目「金一、四九七、四九六円(円位未満四捨五入)」を「金一九四万三五〇一円(円未満切捨)」と訂正、同五枚目表四及び五行目「金一、四五〇、一七〇円」を「金二三九万〇八二七円」と訂正、同丁表、終りから四行目「金九五〇、一七〇円」を「金一八九万〇八二七円」と訂正、同丁終りより二行目「一、五九七、四九六円」を「二〇四万三五〇一円」と訂正する。それ故控訴人の被控訴人らに対して賠償すべき各損害額は右の通りであるが、被控訴人らから不服申立のない本件においては、控訴人に対し右各損害額の範囲内であり且つ被控訴人らの各請求の範囲内で原判決主文第一項掲記の各金員の支払を命じた原判決は正当であつて、控訴人の本件控訴は理由がないから棄却すべきものとし、控訴費用につき民訴法第八九条第九五条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 川添利起 長利正己 田尾桃二)

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